いわき市講演会㊴:「不登校しなかった」ことが過失相殺

  そして、これは民事訴訟ですから、被害者側の落ち度が「過失相殺」という形で問われます。このことは私たちも例えば交通事故の示談交渉などでも経験していることで、例えば車にひかれた歩行者にも、信号無視したとか、横断歩道でないところを渡っていたとか過失がありますと、過失割合が「5対5」とか「3対7」とか判定されて、損害賠償額が減額されます。
 この事件の場合、裁判官は被害者の過失として「せめて登校拒否をするというようなことさえできなかったのかということはいってもよさそうである」と指摘して、つまり登校拒否をしないで学校に通ったことを、被害者の過失として40%の過失相殺を適用したのです。
 そして、家族の過失については「原告ハナ(被害者の祖母)の指導の重点は、あくまで二郎を学校に行かせることにあり、したがって、二郎が学校に行くのを嫌がっていることを感じ取れたにもかかわらず、その原因を思いやることなくひたすらに出席させ」云々と指摘し、「このような対応は、原告ハナの熱意とは裏腹に、ただ二郎の逃げ道を狭める結果となり、二郎をますます窮地に追い込むことになったものといわざるをえない」と述べて、保護者側の過失として30%を認定し、残り30%だけを学校側の過失として認定したというものです。
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いわき市講演会㊳:不登校まで至らなかったので自殺を予見できなかった!?

  しかし、この判決はその一方で、子どもや学校の現実を理解しているとは思えない判断もくだされていて、この事件にいついては「自殺の予見はできなかった」と言うのですが、その理由について、この判決文では次のように指摘しています。
  「通常、いじめを受けて自殺を考える程に苦悩しているというのであれば、その前兆として教師に対して必死の訴えがあり、それ以上に家人に対する悲痛な叫びのようなものがある筈であり、また、何はともあれ顕著な登校拒否症状が生ずるであろうことが考えられる。」と指摘し、さらに「ところが二郎(被害者)の場合には、家人に対してさえも深刻な苦悩の様子を明らかにしたということはなく、また、それ程目立った不登校もない」と言うわけです。
 いじめに遭っている子どもが家族にもなかなか打ち明けられないというのはわが家の長女もそうでしたから、これは子どもの心情を全く理解していませんし、不登校していないから、周りもそんなに深刻に考えなかったとういうのも、子どもにとって不登校するというのはどんなに大変なことか、やはり全く理解していないわけです。
 

いわき市講演会㊲:いじめ自殺裁判の教訓~いわき市小川中学校事件

※「いわき市講演会」の連載を再開します
 「いじめ自殺裁判」の教訓について、「いじめで辛いときは、ただちに学校を休んだ方がよい」ということを、図らずも裏付ける内容になっている事件がありますので、少し紹介します。
 まず平成2年12月16日に福島地裁いわき支部での小川中学校事件です。こちらは地元ですし、関係者の方がおられるかしれませんので、この話をすべきかどうか迷ったのですが、私はとても重要な裁判だと思いますので、紹介させていただきます。
  これは昭和60年に、いわき市立小川中学校3年生の男子生徒が、同級生からの激しいいじめにより自殺したことに対し、遺族が学校設置者であるいわき市を被告として損害賠償計8300万円を請求した民事訴訟です。
その判決では、まず自殺の主因を悪質ないじめと認め、学校側に安全保持義務違反があるということで、学校側の過失を認定しました。
 そして、学校側に安全保持義務違反があったかどうかの判断は、そのいじめが被害者の心身に重大な危害が及ぶような悪質なものであるという認識ができれば十分で、被害者の自殺を予見できたかどうかを問う必要はないと指摘しています。
 これはとても重要な指摘で、「いじめ自殺」の報道の中で「いじめを防げなかったことは申し訳ないが、いじめと自殺の因果関係がはっきりしないので、自殺についてまで責任を追求されても困る」みたいなコメントをする教育関係者がよくいます。
 これはとんでもない話で、20年以上も前のこの判決で指摘されたことを全く学んでおらず、同じ弁明が繰り返されていることに、情けなくなります。

多様な教育機会確保法案:朝日詩文記事・解説(2015年5月20日)

■<解説>不登校の子に選択肢
 不登校の小中学生は20年近く10万人を超え続けている。「なぜ学校に行けないのか」と自分を責める子や悩む親は少なくない。
 その現実を前に、政府の教育再生実行会議が昨年7月、フリースクールなどの位置づけを検討するよう提言。文科省も1月から検討会議で議論を始めた。
 今回の法案は、場所を限らずに、保護者が子に一定水準の教育を受けさせた場合、義務を果たしたとみなすもので、制度化への機運が党派を超えて高まってきたことを示す。「学校一辺倒の教育に風穴を開けたい」と立法チーム座長の馳浩
(はせひろし)衆院議員は話す。
 実現すれば、子は自分に合った学びの場を選べ、教委も子の状態を確かめながら支援できる。
 ただ、課題は多い。個別学習計画を教委がどう判断するのか。子の受ける教育の質をどう保証するのか。過去には、子への暴行が問題になったフリースクールもあり、そうした施設をどう排除するのか。卒業は誰が認定するのか。具体的な
制度設計はこれからだ。(編集委員・氏岡真弓)

野村俊幸 tnomura@sea.ncv.ne.jp
著書 『カナリアたちの警鐘~不登校・ひきこもり・いじめ・体罰ヘはどにように対処したらよいか』
  文芸社セレクション・文庫版、700円+税 書店注文または送料著者負担により送付可 

「多様な教育機会確保法案」(朝日新聞:5月20日)

 「学校外で義務教育容認 超党派議連 国会提出めざす」という記事が昨日の朝日新聞に掲載されました。事態は予想以上のスピードで展開しているようです。
【記事本文】
 不登校の子たちが通うフリースクールや家庭など、小中学校以外での学びを義務教育の制度内に位置づける法案を、超党派の議員連盟の立法チームがまとめた 。
  実現すれば、義務教育の場を学校に限った1941年の国民学校令以来、74年ぶりの転換となる。不登校の子に学校復帰のみを求めてきた政策も見直す動きだ。
 法案は「多様な教育機会確保法案」。議連には自民、民主、維新、公明、共産などの議員が加わり、27日の総会で案を固めたうえで、議員立法に向けて今国会での提案を目指す。
 不登校の小中学生が約12万人いる現状を踏まえ、文部科学省は1月、フリースクールなどで学ぶ子を支援する方向で有識者会議を設けた。法案は「多様な教育機会の確保」という理念を掲げ、対象を「様々な事情で学校で教育を十分に受
けていない子」と定めた。
 保護者が子どもと話し合って学校以外で学ぶことを選んだ場合、地元の教育委員会や学校、フリースクールなどの助言を得て「個別学習計画」を作り、市町村教委に申請できる。教委は「教育支援委員会」を作って審査。その結果を参考に
判断する。認定した場合、教委職員やスクールソーシャルワーカーらが定期的に訪問して助言。国や自治体は家庭への経済的支援も検討するという。
 学齢期の子に限らず、義務教育を受けられずに学齢を超えた人向けに、夜間中学の整備を進める仕組みづくりも法案に盛り込んだ。

「シンタの集い」のお知らせ

こんな事業があります。とても素敵な紹介チラシがありますので、ご希望の方にはデータをお送りします。
【シンタの集い:北の実践者交流会in函館】
□時期:7月25日(土)~26日(日)
□会場:グリーンピア大沼カナディアンハウス(森町赤井川229)
□プログラム
(25日)13:00 受付開始
    13:30 開会式・自己紹介
    14:30~16:30 講演会・意見交換
      講師:野村俊幸(社会福祉士・精神保健福祉士)
          不登校やひきこもりのサポート活動について話題提供し
          質疑応答と意見・情報交換を行います。  
    17:00~18:30 フリータイム  
    18:30~夕食(ジンギスカン)交流会
(26日)9:30~11:30 ラウンドテーブル
      テーマを設けて小グループでディスカッションをします。
      日々の実践の中で感じていることを自由に話して共有しましょう。
      皆さんでお話したいテーマも募集中です。
    11:30~12:00 閉会式
□参加費 10000円程度(宿泊費・食費)
□申込方法 名前・所属・参加の同期・交通手段を明記の上、下記「申込受付係」に
        お申込みください。締め切りは7ガツ日(日)です。
        会場はJR大沼公園駅から車で約15分です。駅から会場までの
        送迎をご希望の方はお忘れなくお知らせください。
    メール:shinta.no.tsudoi@gmail.com FAF:011-778-0438
□主催 北海道教育大学札幌校臨床心理学研究室
 協力  成田行子さん(かとうメンタルクリニック) 野村俊幸
□シンタとは…アイヌ語で「ゆりかご」「(神が乗る)空飛ぶ船」を意味する言葉です。
         この集いが、”いろいろな人の思いや可能性を抱える器のような場”
         ”あちこち行き交い人を繋いでいくような場”になるといいな、と思ってます。
  シンタの集いブログ http://plaza.rakuten.co.jp/shintanotsudoi

いわき市講演会㊱:「出席停止」と「不登校対策」は全く別問題

 人間の心は、そのような状態に追い込まれた原因がなくなったからと言って、自動的に回復するような単純なものでないことは、私たちの日々の暮らしの中でもしばしば経験していることではないでしょうか。いじめられた後とそれ以前とでは、子どもの心の状態が全く違っており、いじめによって受けたダメージから回復するにはとても時間がかかるものであり、ゆっくり休養させてあげることが何より大切でだと思います。
 つまり、「出席停止」については被害者を学校に戻すための手段と考えても全く意味はありませんので、それは加害者への指導にとって効果的なのかどうかで考えるべきことだと思います。
 第4は、「学校に通わないと子どもはちゃんと成長できない」とか「不登校が長引くと進学などが不利になる」という心配です。確かにこれも分かりますが、長く不登校しても社会に巣立ち、元気に暮らしている子どもたちがたくさんいるという現実と、子ども成長の道筋をもっと多様に考えた方が良いのではないか、ということをあらためて申し上げたいと思います。
 そこで、「いじめ自殺」裁判の重要な教訓についてご紹介いたします。

著書 『カナリアたちの警鐘~不登校・ひきこもり・いじめ・体罰ヘはどにように対処したらよいか』
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いわき市講演会㉟:「加害者の出席停止こそ」という意見もありますが…

  第2は、「仲直りさせる、加害者に謝罪させることで解決を図る」という意見もあるでしょうが、「仲直り」とか「謝罪」の中身が問題でありまして、それが表面的なものに終わると事態はもっと深刻になり、取り返しのつかないことになりかねませんので、このことにつきましては、後ほど「いじめ自殺裁判」にところでふれたいと思います。
  第3は、被害者を休ませることより、「加害者を出席停止にすべきで、そうでないと不公平ではないか」という意見もよくうかがいます。私もいじめ被害者の親としては、その気持ちもよく分かりますが、そこまでいかなくても、例えばクラス替でいじめた子どもがいなくなった場合などに、「加害者がいなくなった」、つまり「いじめの原因が取り除かれた」、だから学校に来ることができる、と単純に考えることはできません。
 何故かと申しますと、「いじめ」によってその子の心がズタズタにされている場合、「いじめっ子がいなくなったからもう大丈夫だよ」と言うだけで心の傷が回復するくらいなら苦労はありません。
 DV男のところから逃れたからといって被害を受けた女性はすぐに元気になるでしょうか。虐待を受けた子どもが保護されたからといって、子どもの心や生活はすぐに元通りになるでしょうか。

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いわき市講演会㉞:いじめで取りかえしのつかないダメージも

  しかし、こう提案いたしますと、必ず次のような疑問や批判をいただくことになると思いますので、少し紹介いたします。
 まず第一は、「長い人生には辛いことがたくさんあり、そのたびにそこから逃げていては人間生きて行けない、大人になってからでは遅いので、子どものうちから困難から逃げないでそれに打ち克つ強さを持つように教育しなければならない」という意見で、確かに、一般論としては、そのような心がまえも必要でしょう。
 しかし、「いじめ」は明らかな人権侵害であり、暴行や恐喝といった犯罪に該当する場合もありますし、無視や暴言、陰湿な嫌がらせなども、取り返しのつかない精神的なダメージを与えます。
 そこで、注目すべき新聞記事を紹介したいのですが、石川県加賀市の小学1年生の女の子が同級生からいじめを受けてPTSD(外傷性ストレス障害)を発症し、保護者が損害賠償を求めた裁判で、金沢地方裁判所小松支部は、2学期から同級生がその子を階段で押し倒して、「きもい」などなどと言ったために学校に行けなくなり、2年生なってPTSDを発症したという医師の診断を認め、加賀市と同級生3人の保護者6人に約700万円の支払いを命じたというものです。
 子どもが小さいときは「いじめ」と「悪ふざけ」の区別がつきにくいという話をよくうかがうのですが、このように小学低学年でもPTSDの原因になるわけですから、いじめが子どもに与える精神的ダメージの大きさを私たち大人はもっと深刻に考えるべきであり、しっかりとアンテナを張って子どものSOSをキャッチする責任があると思います。
 「辛いことに耐えるのも人生経験」とおっしゃる方でも、まさか「人権侵害や犯罪被害に耐えるのも人生経験」などとは言わないと思いますので、「いじめ」に対しても「被害に遭わない、被害を避ける」ことが一番の基本であると申し上げたいわけです。

いわき市講演会㉝:「いじめ」への対処の基本

 GW明けの行事は10日午前のひきこもり体験者の集い「樹陽のたより」でスタートし、過去最多(と思います)の13名が参加、午後の道南ひきこもりう家族交流会「あさがお」例会も26名と多数の方に参加いただきました・「アカシヤ会」も参加者が増え続けており、このことをどのように考えたらよいのか、思案中です…
 この間、GWだったりイベント紹介が続いたりで「いわき市講演会」の連載が中断してましたが、再開します。
【いわき市講演会記録・続き】
 最後に、いじめの問題について少しふれたいと思います。「いじめ防止にいかに取り組むか」とか、「いじめのない学校づくりにはどうしたら良いか」といった話をする能力は私にはありませんし、これは心理学や教育学の専門家にお願いすることにしまして、私の場合は「いじめの被害にあった子どもの親」という立場から、いじめにどう対処したらとよいかについてだけ、一言申し上げたいと思います。
 それは極めて簡単なことで、「危険なところに行かない」、つまりまずは「いじめ」から逃れ、「学校を休んでください」とうことです。これは別に特別な話ではなく、身の安全を守るための基本です。福島の原発事故では一定以上の放射線量の地域は自分の土地や財産があっても立入禁止になってますし、災害の重大な危険性があるときは、行政の責任において避難命令も出します。

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GW明けは不登校相談が増えます。そこで…

 例年、GW明けに不登校相談が増えます。そんなときこそ、同じような辛さや体験を抱える人々同士が語り合う場は、とても大きな力を発揮します。全国各地でそのような当事者グループが活動していますので各地の活動状況は下記にお問い合わせください。
□NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク 電話・FAX 03-3906-5614
□NPO法人フリースクール全国ネットワーク 電話・FAX 03-5924-0525

 なお、道南の5月の不登校関連行事は以下のとおりです。また、「函館圏フリースクール すまいる」では、今年度から毎週月曜日13時~15時、定例の個別面接相談を実施しています。申し込みは野村:090-6261-6984へ。(5月8日の函館新聞第7面「教育」欄に紹介記事が大きく掲載されました)

【登校拒否と教育を考える函館アカシヤ会 例会】
5月17日(日)午後1時30分~4時、函館市総合福祉センターあいよる4階会議室(若松町33-6)。不登校の子どもを持つ家族や過去に経験のある家族、教師、支援者らが集まり、悩みや子どもとの関わり方などについて話し合う。資料代200円。(連絡先:野村☎090-6261-6984)

【「昴の会」~不登校をともに考える会 例会】
 5月24日(日)午後2時~4時、北斗市七重浜住民センターれいんぼ~。不登校やひきこもりの子どもを持つ家族や過去に経験のある家族、教師、支援者らが集まり、悩みや子どもとの関わり方などについて話し合う。資料代300円。
16時から社会福祉士による個別相談も実施。(連絡先:川崎☎090-9438-0825)

5月の「ひきこもり」関連行事のお知らせ

 皆さま、GWはいかがお過ごすでしょうか。5月の「ひきこもり」関連行事は会のとおりですので、お悩みの方、
関心をお持ちの方にお知らせいただければ幸いです。

【ひきこもり当事者の集い「樹陽のたより」例会】
5月10日(日)午前11時~午後1時、函館地域生活支援センター(駒場町9-24)。きこもりを体験者した当事者が体験や悩みを語り合い、ひ今後の進路や社会参加の取り組みなどについて話し合う。参加費無料。連絡先:野村?090-6261-6984 

【道南ひきこもり家族交流会「あさがお」例会】
5月10日(日)午後2時~4時、函館市総合保健センター(五稜郭町23-1)。ひきこもり当事者や家族が集まり、体験や悩みを語り合い、ひきこもり者への関わり方などを学ぶ。臨床心理士や医療ソーシャルワーカーなどもサポーターとして参加。会員以外は資料代200円。連絡先:野村?090-6261-6984

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