不登校「問題」はなぜ解決しないのか⑫:文科初770号通知の意義・ラスト

  通知ではさらに「(4)不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保」で『不登校児童生徒一人一人の状況に応じて、教育センター、不登校特例校、フリースクールなどの民間施設、ICTを活用した学習支援など、多様な教育機会を確保する必要があること。また、夜間中学に おいて、 本人の希望を尊重した上での受入れも可能であること。』と記載しています。 
  また、「3 教育委員会の取り組みの充実」では『市区町村教育委員会のおいては、主体的に教育センターの整備充実を進めていくことが必要であり、 教育セ ンターの設置促進に当たっては、例えば自治体が施設を設置し、民間の協力の下に運営する公民協 営型の設置も考えられること。』
このようにフリースクールの活用が公に推奨されるようになったことは、とても大きな意義があるでしょう。しかし、法律や通知が出ただけで学校現場が急激に変化するとは思えないのです。不登校を生み出す教育システムを変えていくには、次のような課題を解決していく必要があり、今回の立法と通知をそのために大いに活用していきたいものです。、
  ① 根強い学歴神話・学校信仰が生み出す学校化社会・教育家族にを変えていく取り組み
  ② 様々なオルタナティブ教育の実践と成果を広く社会に知ってもらう取り組み
  ③ 不登校のこども・家族等当事者からの情発信とそれを支える取り組み 
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不登校「問題」はなぜ解決しないのか⑪:文科初770号通知の意義:

  通知では前述の「基本的考え方」を受けて、「2 学校等の取り組みの充実」を規定し、具体的な取り組みについて述べていますが、その「 (3)不登校児童生徒に対する効果的な支援の充実」では、次のように指摘しています。
1.校長のリーダーシップの下、教員だけでなく、様々な専門スタッフと連携協力し、組織的な支援体制を整えることが必要であ    ること。
3.学級担任の視点のみならず、スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカー等によるアセスメ ント(見立てが)有効で   あること。また、アセスメントにより策定された支援計画を実施するに当たっては、学校、保護者及び関係機関で支援計画を共  有し、組織的・計画的な支援を行うことが重要であること。』
4.相談支援体制の両輪であるスクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーを効果的に活用し、 学校全体の教育力の   向上を図ることが重要であること。』
7.いじめられている児童生徒の緊急避難としての欠席が弾力的に認められてもよく、そのような場合には、その後の学習に支障  がないよう配慮が求められること

 このように、従来は学校だけで抱え込みがちであったものを、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の活用・連携が重要であることを明確にし、学校の方針を一方的に押し付けるのはなく、保護者と一緒に考えていくことの重要性も述べています。また、いじめを受けている生徒が学校を休めるように配慮することも記載され、従来の姿勢を変えていくことが求められています。


不登校「問題」はなぜ解決しないのか⑩:文科:初770号通知の意義②

  この通知では、次に「1 不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方」で、「 (1)支援の視点」として、次のように記載している。
『「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に 自立することを目指す必要があること。また、児童生徒によっては、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等 の積極的な意味を持つ事がある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立のリスクが存在するこ とに留意すること。』
『また、児童生徒の才能や能力に応じて、それぞれの可能性を伸ばせるよう、本人の意思を尊重した上で、場合に よっては、教育支援センターや不登校特例校、ICTを活用した学習支援、フリースクール、夜間中学等を活用し 社会的自立への支援を行うこと』
  つまり、学校復帰を目的化ぜず、不登校にもその子にとって意味のある場合もあること、学校以外の場も重要であることを認めたことになり、これは今後の「不登校対策」にとって大きな意味を持つであろう。

不登校「問題」はなぜ解決しないのか⑨:文科省初770号通知の意義

  確保法は議員立法により提案・成立したものですが、文科省も平成27年1月に「不登校に関する調査研究協力者会議」を発足させ、不登校政策のあり方について検討を依頼、28年7月に「不登校児童生徒への支援に関する最終報告~一人一人の多様な課題に対応して切れ目のない組織的な支援の推進」を取りまとめました。ここには、従来の「学校復帰ありき」の「不登校対策」とは一味も二味も違う内容が盛り込まれ、それを受けて28年9月14日に「不登り校児童生徒への支援の在り方について(通知)」28文科初第770号を発っしました。
  その「前文」では、『不登校とは,多様な要因・背景により,結果として不登校状態になっているということであり,その行為を「問題行動 と判断してはならない。不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し,学校・家庭・社会が不登校児童生 徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが,児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要であり,周 囲の大人との信頼関係を構築していく過程が社会性や人間性の伸長につながり,結果として児童生徒の社会的自 立につながることが期待される。』とし、不登校は問題行動ではないと明記されたのです。

不登校「問題」はなぜ解決しないのか⑧:確保法を実効性あるもにするために

 確保法は理念法ですから、これを実効性あるものにするためには当事者を始め関係者が声を上げていく必要があります。間もなく基本指針づくりが始まるとのことですので、私は次にようなことをいろんな形で情報発信したいと思っています。
□第3条三について
  「不登校児童生徒が安心して教育を十分受けられるよう」ということは、不登校児童生徒が学校に復帰すれば不登校児童生徒  ではなくなるので、「学校復帰せずに不登校の状態のままで学校の教育環境をいろいろ活用できるよう配慮する」という意味で  あることを明確にする。例えば、本人の希望があった場合は通信や訪問サポート、図書・教材の貸し出しなどに配慮するなど。
□第6条について
  「必要な財政上の措置」の一環として、フリースクールへの財政支援について方向性を明確にし、フリースクールへの直接補   助、事業委託、バウチャー方式など具体的に検討する。
□第9条について
  「心理、福祉等に関する専門的知識を有する者~」と規定しているが、スクールカウンセラーに比べてスクールソーシャルワー   カーの導入・活用がまだまだ大きく遅れているので、SWの導入・活用を促進し予算措置も行う。
□第12条について
  「学校以外の場において行う学習活動の状況」を「継続的に把握するために必要な措置」として、地方公共団体はフリースクー  ル等との連絡協議会等を設置する。その際は、教育委員会だけではなく思春期保健や子育て支援等に関わる保健福祉部局   の参加も求め、総合的なサポートを目指す。
□第13条について
  「学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み」、フリースクール等に情報を学校現場に周知し、個々の  教員の理解と保護者への積極的な情報提供を図る。また、「不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ」、各教育委員会や学   校で作成している不登校対応に係るマニュアルの見直しを行い、学校復帰を目的化した内容については是正する。
□付帯決議の内容について、とりわけ、「一、児童生徒の意思を十分に尊重し~」、「二、不登校が児童生徒に起因するものと一般  に受け取られないよう、 また不登校というだけで問題行動と受けとられないよう配慮すること」、「四、いじめから身を守るため   に、一定期間休むことを認める」ことについて、学校現場への周知徹底を図る。

不登校「問題」はなぜ解決しないのか⑦:教育機会確保法の意義・その2

  ところで、不登校支援と夜間中学の拡充がなぜ同じ法律の中に入っているのは、 不登校児童生徒と夜間中学を必要としている人々は、憲法第26条の教育を受ける権利が保障されて いない状態という共通性があり、このような違憲状態を改善するために同一の法制の中で対応が進めら れたと私は考えています。なので、フリースクール議員連盟と夜間中学議員連盟の共同作業として立法化が進められてきたと思います。
  また、立法化の過程で、自民党保守派の反対だけでなく、不登校関係者の中にも反対意見がありました。これまで不登校に対する学校や教育行政の心無い対応によって傷ついた多くの子ども・家庭があったことを考えると、行政が積極的に不登校に関わることに強い懸念や不安を持つことは十分に理解できます。そこで、次のような付帯決議を採択し、それらの懸念や不安に応えています。
【 9項目の付帯決議による補強】
一、不登校児童生徒を追いつめることのないよう配慮、児童生徒の意思を十分に尊重
   二、不登校というだけで問題行動であると受けとられないよう配慮
   三、多様な児童生徒を包摂し共生することのできる学校環境の実現を図る
   四、いじめから身を守るために一定期間学校を休むことを認める
   五、個人のプライバシーの保護に配慮して、原則として当該児童生徒や保護者の意思を尊重
   六、不登校特例校の整備に当たって、過度の営利を目的としたものは認めない
   七、夜間中学の整備が可及的速やかに実施されるよう全ての都道府県への設置に努める
   八、夜間中学が不登校の生徒を受け入れる場合は、様々な事情で義務教育を受けることのできなかった学齢超過者の教育      を担う役割も担っていることを尊重、教員の加配等を配慮
   九、フリースクール等多様な学習活動に対し、負担軽減のための経済的支援について検討

不登校「問題」はなぜ解決しないのか⑥:教育機会確保法の意義

  それではこれまでの学校復帰一辺倒の不登校政策を変える上で、教育機会確保が役に立ちそうな条文を見ていきます。
□ 第1条:児童の権利に関する条約を教育法制の中に明記
□ 第3条一:児童生徒が不登校にならなくてすむように学校の環境を整えるよう努める。
□ 第3条二:「不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情に踏まえ」ることを明記
         → 自宅学習やフリースクール等での学習を想定、学校にこだわらない視点
□ 第3条三:「不登校児童生徒が安心して十分教育を受けられるよう」と規定、学校に戻れば不登校児童生徒でなくなるので不登        校のままでも支援するという趣旨と解釈できる。→ ネット等利用の通信制や訪問型の支援、学校の施設・備品の利用        などが想定される
□ 第3条四:本の意思を尊重、年齢、国籍に関係なく教育を受ける機会を確保する。
□ 第6条:努力規定ではあるが、財政上の措置を明記
□ 第9条:組織的・継続的支援の必要性、心理・福祉等の専門職との情報共有の促進を規定し、スクールカウンセラーやスクール       ソーシャルワーカーの必要性を担保する内容 
□ 第10条:いわゆる不登校特例校(東京シューレ葛飾中学校等がモデル)の整備を明記
□ 第12条:「不登校児童生徒が学校以外の場において行う学習活動の状況」を継続的に把握する」ことを規定し、フリースクール        等との連携につながる。
□ 第13条:「学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性」「不登校児童生徒の休養の必要性」を明記
□ 第4章:いわゆる夜間中学の必要性と充実・強化、地方公共団体の責務を規定    

不登校「問題」はなぜ解決しないのか⑤:教育機会確保法への道程

  さて、硬直した教育制度が不登校を深刻な問題にしてしまうことを見てきましたが、昨年12月「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会各方法)が成立し、ほんのわずかですが、この硬直した精度を見直す手がかりができました。
  そもそも法律の名前が面白いですよね、「義務教育=みんな学校に通う義務」であれば、「教育機会の確保」なんて言う必要がないはずですが、現実がそうなっていなのでこのような法律が必要になった訳です。
  しかし、ここに至るまで大きな紆余曲折がありました。話の始まりは、全国フリースクールネットワークの「不登校の子どもたちが学校以外で学ぶ場を制度として認めてほしい」という要求と、シュタイナー教育など既存の学校教育では満足できない様々な教育実践や硬 直した日本の教育制度を変えたいという運動が結びつき、2012年に多様な学び保障法を実現する 会が発足し、新法制定の運動がスタートしたことです。
  その後、フリースクール議員連盟などとも協働しながら取り組みを進め、議員立法により多様な教育機会確保法を実現する機運が高まりました。「多様な学び保障法」が求めたのは、初めから学校教育法による既存の学校とは別に学ぶ場をつくることを認め選択できる自由でした。
   しかし、日本社会の根強い「学校信仰」の下では一気にそこまでは無理であろうとの判断もあり、議連立法チームの案は学校教育法を前提に、不登校の子どもが家庭やフリースクール等で学ぶことを「個別学習支援計画」で認定し学校以外でも育つことを認めようというものになりました。
  これに対し、自民党内の「不登校を助長する」という反対も強く、「多様な」が削除され、不登校児童生徒の学習を支援するという内容に落ち着いたのですが、法律には多少なりともこれまでの不登校政策を見直すことにつながるな重要な 規定が盛り込まれた。

不登校「問題」はなぜ解決しないのか④:学校教育法の桎梏

 憲法の規定を受けて、教育基本法第5条で『国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。』と規定しましたが、第6条で「法律に定る学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。」と実施者を限定しました。 した。
しかも、その下位法規である学校教育法はこの「法律に定める学校」について、第1条で『この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。』と規定し、普通教育を受けるこ とができる学校を、いわゆるこの「1条校」に限定しています。
 なので、憲法で保障された「普通教育を受ける権利」は、学校教育法で定める学校以外では実現できず、何らかの事情で当該学校に行くことが困難になった児童生徒は憲法で保障された教育を受ける権利を行使できない状態におかれることになります。
  そればかりか1条校しか認められないことから、あたかも「義務教育=子どもが学 校に通う義務」というような逆転した発想が生まれ、学校に行かないことが問題行動とみなされることになってしまったのです。
  そこから 「不登校対策=学校復帰」という政策が必然化し、不登校の子ども・家族を苦しめることになり、学校に行けないことを苦に自殺する子どもまで生み出しているのです。
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