体罰についての明橋大二先生の朝日新聞コメント

 大ベストセラー「子育てハッピーアドバイス」シリーズでおなじみの明橋大二先生が、体罰に関する所見を朝日新聞に掲載、今大問題になっているスポーツ界の体罰問題を根絶するうえでも、とても示唆に富む内容と思いますのでご紹介します。

 精神医学的にみても、家庭の内外を問わず、体罰は子供の成長に良くないという結論がはっきりしている。米国で3万6千人の子供を調べた報告がある。体罰を受けると、その時は親の命令に従うが、成長した時、「攻撃性が強くなる」「非行など反社会的行動に走る」「精神疾患の発症」という三つのリスクが高いことがわかった。
 日本でも0~6歳の子供を追跡した調査があり、体罰を受けた子は、受けなかった子に比べ、時間がたつと言葉や社会性の発達に遅れが出る傾向があった。
 薬に例えて考えてほしい。長期的な副作用がはっきりしている薬を、一時的に効果があるからといって子供に飲ませるだろうか。体罰も同じ。子育てにも教育にも使うべきではない。あらゆる状況において、子供への体罰を法的に禁止した国は33カ国にのぼる。
 体罰にはどうしても怒り、非難といった感情がこもる。それを繰り返し受けると、心理的な影響としては、子供は恐怖を覚えて萎縮し、自信を失う。「口で言ってもわからないから、体でわからせる」とよく言われるが、恐怖を味わわせてやめさせる方法自体、子供の人格を否定している。
 確かに子供は体罰を避けるために大人の前ではおとなしくなる。だが、見てないところでは反動が生まれる。規範は良心が育ち、善悪のけじめが主体的についてこそ守れるものだが、恐怖感に訴えるしつけでは、恐怖を感じないところではルールを守れなくなるということになる。殴り続けられた子供が思春期に入って家庭内暴力に走ることがあるのは、自分が親の力を凌駕すると親への恐怖心がブレーキにならず、恨みつらみを吐き出すからだ。
 運動部活動でみると、体罰は生徒の本来の力を発揮できなくさせてしまう悪影響が十分に考えられる。競技で大事なのはリラックスだが、体罰を繰り返し受けた生徒は対人恐怖を覚え、多くの人の前であがりやすくなる。また、「失敗したら先生に怒られる」ということばかりを考え、伸び伸びと競技ができなくなる。
 昔の日本選手が本番で実力を発揮できないことが多かったのは、いわば軍隊式の練習の中、プレッシャーがかかった状態で競技をしていたからだろう。近年、様々な競技で日本勢の成績が上がっているのは、自分を信頼する気持ちが強い選手が増えてきたからだではないか。そういう選手が体罰を繰り返し受けて育つとは思えない。
 生徒時代に体罰を受けてスポーツをやってきた顧問が体罰を加える側に回りやすいのは、体罰を受けた子供が親になった時、体罰に走りやすくなるのと同じだ。こうした教師は生徒をなぐる中に、自分が体罰を受けてきた怒りがどこか交ざっている。
 また、殴られてスポーツをしてきた教師は「あれはいいことだ」と思ってしまっている。「自分は体罰に負けなかったから強いのだ。負けるのは弱い人間だ」という自信。それは、生徒に対して「この程度の体罰でつぶれるようなら、最初から見込みがない」という接し方になる。
 スポーツの現場を含め、体罰をする人は「それで愛情を伝えるのだ」と言う。だが、体罰は子供にそう受け取られないリスクが非常に高いもの。体罰を受けて結果的によかったと思う子供に比べ、傷つく子供、自信を失う子供、大人に不信感を持つ子供がたくさん生まれていくという事実を知り、安全な伝え方を採ってもらいたい。

略歴 あけはし・だいじ 1959年生まれ。大阪府出身。京大卒。真生会富山病院心療内科部長。専門は精神病理学、児童思春期精神医療で、「子育てハッピーアドバイス」などの著書がある。NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長。
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